続・てるてる日記

石井てる美です。ワタナベエンターテインメント所属のピン芸人。てるてるB面。

ヒラリー芸人〜その3、完結編〜

ヒラリーの負けが濃厚になると、あれほど大量の人が並んで入りたがっていたジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターから続々と人が帰り出しました。泣いている人もいました。会場で配られた星条旗が目の前のゴミ箱に捨てられました。(ニューヨーク滞在中にアップした写真の中でこの「ゴミ箱に捨てられた星条旗」の写真が一番多くリツイートされたのでした。)そんなわけで私も一緒に見ていたウォッチャーの人たちと建物を後にしました。


ガラス張りのジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターを振り返って見ながら"ガラスの天井っぽい建物"がやたら皮肉だなーと思いました。「ヒラリーになる」と常識のように言われていたので、まだ俄かには信じられない気持ちでした。「ヒラリーは選挙戦終盤で有名歌手をやたら集めて歌わせ過ぎだったんじゃない?」とかヒラリーが演説で連呼してた「"Love Trumps Hate.(愛は憎しみに勝つ。)"は上手いこと言っているようでトランプの存在を強化しているみたいであまり好きじゃなかったなー」とか今さら思いながらとぼとぼとタイムズスクエアの方に向かったのでした。


到着したタイムズスクエアでは、電光掲示板にデカデカとヒラリーとトランプの顔とそれぞれの獲得選挙人数が表示されていて、多くの人が選挙の決着を固唾を飲んで見守っていました。私はジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターでのAbemaTVの選挙特番の中継レポートをノーカツラ&ノーメイクでしなければならなかったので、タイムズスクエアに向かうときにはヒラリーメイクもしておらずそのまま帰ろうとしてました。しかし、タイムズスクエアに充満する「今ここが世界で一番ホットな場所だ」感。その空気に触発され、どうせヒラリー落ちるにしてもせっかくだから芸人としてもうひと暴れしてから帰国しようと変なスイッチが入り、日付が変わる頃に路上でもう一度ヒラリーメイクを施して、タイムズスクエアでワイワイすることにしたのでした。世界中の人と一緒に写真を撮ったり撮られたり、どこの国か分からないメディアから取材を受けたり、動画レポートを上げたり、とそれはそれはもうヒラリー芸人冥利に尽きるクレイジーな時間でした。いい時にいい場所にいたもんです。"Hey Hillary! How are you feeling!?(ヒラリー気分はどうだい!?)"と声を掛けられたり、喜ぶトランプ支持者の前であえて写真を撮ったり。偶然にも数日前にAbemaPrimeで初めてお会いした報道ステーションの富川アナウンサーとバッタリ遭遇したりも。印象に残ったのは"We still love you.(それでもまだ大好きよ。)"と声を掛けられたこと。ヒラリー芸人ではなくヒラリー本人にまさに伝えたかったのであろう言葉を掛けてもらって、モノマネ芸人ってすごいなーと思いました。We still love you.いい言葉だな。


大統領選挙開票日のニューヨークはもっともっとお祭りムードでどんちゃん騒ぎなのかと思いましたが、そこはいつものオシャレで上品なニューヨークのままでした。もちろん午前3時までタイムズスクエアは大勢の人で溢れていましたが、多くの人はじっと電光掲示板を見守るという感じでした。ちなみに、どんちゃん騒ぎ=コスプレ、ではないにしても、コスプレしてる人はタイムズスクエアでトランプを2人、ジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターでヒラリーを1人見かけたくらいでした。候補者Tシャツを着たり帽子かぶったりプラカード持ったり、という人はけっこういましたが。それにしても、アメリカ大統領選挙を現地で味わうなんで、後にも先にも無いだろうなー。いや、4年後また誰かしら(ヒラリー!?)のモノマネで乗り込んでるかもしれない(?)けども。ともかく、日付変わって11月9日早朝のタイムズスクエアでは、オリンピック行ったときと同じような、世紀の瞬間を直に味わえた興奮と歓びでいっぱいでした。体中の細胞が弾けて生命レベルが爆上がり。目にした光景の一瞬一瞬が、渡米前には全く想像できなかった人生で初めて見る映像で埋め尽くされていました。楽しすぎてヒラリーが落選したショックは一旦忘れてました。


タイムズスクエアでひとしきり満喫してホテルに戻ってパッキングをしたらもう空港に向かわねばならない時間でした。けっこういいホテルに2泊したのに一瞬もベッドで横にならなかったのが悔やまれました。早朝の空港から最後のAbemaPrime中継をして、飛行機に乗ってまずは乗り換え先のデトロイトへ。そこの空港で敗戦決定後初めて公の場に出てきたヒラリーをテレビ画面で見ました。いやぁ、泣けましたねぇ。まだ泣かなかったけど。気丈にメッセージを届けるヒラリーにほんとにWe still love you.と言いたい気持ちでした。


日本に向かう飛行機内ではコップに入ったワインを丸ごと自分の股間にこぼしたり手荷物やネタ帳を機内に忘れて後日自宅に郵送してもらったり、、と普段自分がしないことのオンパレードでした。やっぱり人間寝てないとロクなことないですね。ショックで動揺してたのもあるでしょうが。日本に11月10日(木)の夕方帰国して、空港からの道すがら早速敗戦を踏まえた「ガラスの天井破れなかった」ギャグができるようにアクリル板を購入。そのままTBS「あさチャン」さんの取材。まるで売れっ子。爆 


そして帰宅して、翌日の「有田ジェネレーション」用の新ネタ(敗戦後バージョン)を徹夜で作ってそのまま収録へ。小峠さんのお言葉どおり、リアルタイムすぎ。その模様がこちら。(結局新ネタは披露すること無かった…。)


というわけで「落選」したわけですが、大統領落選はあまり実感湧かなかったけども、有田ジェネレーション落選の方が私にはリアルに来ました。収録が終わり楽屋に戻ると女性ゲストでいらしてた浅川梨奈さんが初めてお会いするなり「ネタ好きです」と言ってくださって(天邪鬼なので意識して見ていたけど浅川さんは他の芸人には言ってなかったのでした笑)、その瞬間「そんなふうに言ってくれて嬉しいけどもうこのネタできないんだ…」と思ったら涙が止まらなくなっておばさんは号泣し出しました。浅川さんもスタッフさんも周りの芸人さんも困るわなぁ。というわけでこのタイミングでめっちゃ泣いたのでした。それは有ジェネ落選や大統領落選のショックや、愛着湧いたネタと決別しなきゃいけない寂しさなのか…いろいろなものが混じってそれまで5日間張り詰めてた糸がぷつりと切れた涙だったんだと思うんですが。いや〜、BBAが恥ずかしいですねぇ。てへっ。まぁこうして今動画を見るとこんな大好きな番組に一番いい時期にたくさん出していただいて超絶幸せだったなぁという思いしかないんですけどね。私のヒラリーネタを世に送り出してくれた有田ジェネレーションに心の底から感謝。


当初思ったのが「もうこのネタできないんだ」という失望感でした。なんかネット記事に「仕事が100倍になると言われていた」とか書かれてて、もちろん私がそう言ったことはないしそんな楽観的に考えたこともないんですが、「仕事が増えなかった」とか「これをきっかけに売れたかもしれないのに」とか言う下衆心はさておき、まずは「ここ2年でたっぷり愛着が湧いたネタという希望の種とサヨナラしなきゃいけない」のがショックでした。そう思うと大統領選までの期間は希望に満ち溢れた楽しい時期だったなーと。(そもそもヒラリーネタ2年やってたとは言え同時に3つのネタやってたし、大統領選に向けて知ってもらえたのはつい7月末の話だったりするが。)というわけで、大統領選から3週間経ってみて思うのは、ヒラリーネタ続けながら、同時に別のネタも考えればいいだけの話で。そう考えると希望の種なんてのは気の持ちようでいくらでも転がってるんですよね。ヒラリーネタのおかげで今まで雲の上のような存在だった芸人さんとお話できたり、いろんな人に知っていただいたり。先日、母校のワタナベコメディスクールで卒業生として現役生にメッセージを言う機会があったのですが、ヒラリーの言葉を借りて「お笑いはアメリカンドリームだ」と言ってきました。ほんとにそう思います。


ヒラリーの敗北宣言の言葉がこれまた良かったんですよねぇ。ヒラリーで夢を見て、ヒラリーに泣き、ヒラリーに慰められるという。

To all of us, and to the young people in particular, I hope you will hear this — I have, as Tim said, I have spent my entire life fighting for what I believe in. I've had successes and setbacks and sometimes painful ones. Many of you are at the beginning of your professional, public, and political careers — you will have successes and setbacks too. This loss hurts, but please never stop believing that fighting for what's right is worth it. It is, it is worth it.
(要約:壁にぶつかることもあるけど信じることに向かってとにかく前進!)

Our best days are still ahead of us.
(最良の日はまだこの先にある!)


"Our best days are still ahead of us."とか"The best is yet to come."っていうこの英語の表現、好きなんですよね。人生これからもっといいことがあるよってやつ。



さぁ、タラタラと書いてきましたが、特にオチもなんも無いです。大統領選に有ジェネに落ちた以上のオチは無いです。ゴッドブレスユ〜。



チップをもらったヒラリークリントン(⦿▽⦿)




-----告知だよ-----

<ライブ・メディアなど>

毎週金曜日 21:00〜23:00 AbemaTV「AbemaPrime」
スマホで見るテレビAbemaTVのAbema newsチャンネル「AbemaPrime」金曜日レギュラー出演中。「てる美にTell Me 〜全国オモシロ企業の秘密〜」「テルミーも転職したい マスコミの現場」担当。次回は12月2日(金)です!


11月29日(火)18:55〜20:54テレビ東京「ウソのような本当の瞬間 30秒後に絶対見られるTV」


11月30日(水)「HAMAエンタvol.12」
申し訳ございません。他の仕事の都合により出演キャンセルとなりました。


11月30日(水) 深夜25:18〜26:48 TBS「有田ジェネレーション」
ヒラリークリントン落選しましたが溜まり席でチラチラ映るはずです。


12月3日(土)19:00〜19:57フジテレビ「超ハマる!爆笑キャラパレード」


12月7日(水)日本テレビナカイの窓


12月11日(日)「ジョシ全開 vol.23〜入れ替え戦〜」
開場15:45/開演16:00、場所:新宿ハイジアV-1(地図)、チケット:前売1,200円/当日1,300円


12月12日(月)「東京シンデレラ8」
開演19:00、場所:なかの芸能小劇場(地図)、チケット:確認します円


12月14日(水)「笑いの泉」
開場18:45/開演19:00、場所:なかの芸能小劇場(地図)、チケット:前売800円/当日1,000円


2017年1月〜3月 NHK Eテレおとなの基礎英語 Season5」(再放送)
火〜金曜日 午前10:15〜10:25
水曜日(火曜深夜) 午前1:00〜1:40(4回分)


<著書>
2013年7月10日に発売された著書です。中国語バージョンも出ました。


<ネタ動画>

「有田ジェネレーション」より「ヒラリークリントン」(9:25〜)

「有田ジェネレーション」より「ヒラリークリントンのヒラリーラップ」(2:10〜)


「言いづらいことを英語っぽく言う」


「セックスアンドザシティのサマンサが気になる日本史ワード」


<インタビュー掲載サイト>
●キャリアインタビューサイト『MY CHOICE』
●クリエイターと読者をつなぐサイト『cakes』
●20代の“はたらき”データベース『キャリアコンパス』前編 後編
●電子ブック楽天kobo『気になるあの人の読書生活』
●知的好奇心をくすぐる、大人の英語学習マガジン『Cheer up! English』前編 後編
●東大卒業生の総合サイト『卒業生に聞く「夢・仕事・自分」』
●NHK解説委員室ブログ「視点・論点『シリーズ・人生再出発 他人の目なんか気にするな』
●キャリアとビジネスのニュース・コラムサイト『リクナビNEXT JOURNAL』
ダイヤモンド社のビジネス情報サイト「あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか」著者津田久資氏との対談(上)(下)
朝日新聞デジタル『センター試験中鼻血どばーっ!お笑い芸人石井てる美さん』
●20代の“はたらき”データベース『キャリアコンパス』『元マッキンゼーのお笑い芸人・石井てる美の人生に影響を与えた3冊の本とは』


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